子どもの内にある感受性を探る(2016・2017年度 幼稚園研究紀要)

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概要

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私達の心の内にあるさまざまな力、その一つに「感受性」―「感じ受けとめる力」があります。それは、外界にある、「ひと」「もの」「こと」のすべてに向けられます。何をどこまで、どのように感じ受けとめるかは、人によって違うでしょうし、とりわけ乳幼児期は、発達段階によっても異なります。しかし、他の心の力、例えば「想像力」や「共感性」を発揮する前提には、必ず「感受性」があるといってよいでしょう。
保育の場では、子どもの心のそうした営みを、保育者が感受することを求められます。ことばを通したコミュニケーションは重要な手がかりになりますが、子どもたちのことばによる表現は、まだまだ未熟です。また、大事だからこそことばにはしない、できないという場面も、私達大人と同様にあることでしょう。それゆえ保育者は、ことば以外にも、子どもの表情、身振り、行為など、さまざまな情報を感受し、それらを総合して、子どもの心の「いま」を捉えようと努めるのです。
お茶の水女子大学附属幼稚園では、平成28・29年度の園内研究のテーマを「子どもの内にある感受性を探る」と定め、研究に取り組んできました。それぞれの保育者が持ち寄った事例をもとに、子どもたちの心が何に向けられ、どのように動いているのかを共同的に探究してきました。ーつの事例をめぐっても多様な解釈があり、つねにーつの正解が導かれるわけではありません。しかし、各保育者の解釈を重ね、位置づけていく過程で、子どもの心の多面的で複雑なありようが、少しずつ立体的な像として結ばれていくのです。
子どもの心の内にある感受性という捉えがたいものに、少しでも近づき、理解しようとしてきた過程―それは、実は保育者自身の感受性が試される過程でもありました。保育者の眼は、子どもを取り巻く「ひと」「もの」「こと」に向けられ、その向こうに子どもの心、そして感受性を見通そうとしてきました。しかし、そうした保育者のまなざしは、子どもを経由して、自身の心の内にある感受性にふたたび回帰していきました。
子どもたちもまた、成長の過程で、そうしたまなざしの回帰を経験しているのではないでしょうか。子どもたちにとって、見たもの、聞いたことば、体感した空気感など、発達初期にはバラバラな情報であったものが、しだいに見えない糸でつながっていることや、より大きな意味のまとまりを構成していることに気付いていきます。さらに、その大きな意味のまとまりのなかに自身がいるのだと気付くことが、まなざしの回帰の経験であり、そこに、子どもの確かな育ちの軌跡をみることができるように思います。
本研究紀要が、幼児教育の研究と実践に携わる、すべての方たちの関心をつなぎ、広げていく一助になれば幸いです。

出典:2016・2017年度 幼稚園研究紀要

コンテンツ担当者・著者

お茶の水女子大学附属幼稚園 伊集院理子・上坂元絵里・佐藤寛子

論文・教材本文
【目次】 子どもの内にある感受性を探る(2016・2017年度 幼稚園研究紀要)

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  • 登録日時 2019-01-03 21:33:48
  • 更新日時 2024-09-04 11:18:33
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