二等辺三角形の逆は成り立つか?(中2 三角形・四角形)

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概要

学習過程において「命題の逆が成り立つか」という問いを,日常的な数学科の授業の中で積極的に取り上げていこうとするのが本時の主張である.
第2学年の「B図形」領域において統合的・発展的な考察を誘発する問いとして,例えば「考察の対象を拡げても同じ結論がいえるか[拡張]」や「仮定を変えても同じ結論がいえるか[条件変更]」に加え,「仮定と結論を入れ替えても成り立つか[逆]」が重要であると考える.しかし,我々は逆を考えることの価値を理解できているだろうか.
逆を考えることについて,清宮(1988)は「逆の研究」を平面図形の発見的研究法の1つに挙げている.鈴木(1994)は逆の問題を考える意義を(1)論理的な思考力の育成,(2)数学を発展させるよさの感得,(3)思考実験の機会の提供に集約しており,平面図形の学習に限らないよさとして捉えている((1)~(3)の文言は筆者が要約).(1)は,何が原因で何が結果かを明らかにして考える力であり,数学外の不確定な事象を対象とした考察においても汎用的で重要な資質・能力であると考える.例えば,相関関係にある2つの変数間にあるのは因果か/擬似相関か,また因果ならば説明変数/目的変数は何か,などを批判的に検討する思考は,学校教育で重点的に指導されていないが社会では重要である(中室・津川,2017).また,(2)は新たな数学の創造として,(3)は主体的な学びにおける見通しと振り返りとして,新学習指導要領で重視されている.(3)では特に「反例」が大切である.
逆を考えることを指導する機会としては,第2学年では平行線の性質(⇔二直線の平行条件),二等辺三角形の性質(⇔二等辺三角形になるための条件),合同な図形の性質(⇔三角形の合同条件),平行四辺形の性質(⇔平行四辺形になるための条件)などと数多い.筆者は,現行教科書の扱いよりも早く,平行線の性質(⇔二直線の平行条件)で仮定と結論について学び,逆を考えるという行為を繰り返し経験し,これを生徒が自覚化できるようにしたい.それにより,「逆を考えることは簡単に予想がつかなくて楽しい」,「逆を考えることは“いえることを増やしていく”上で重要な思考だ」と捉えられるようになると考える.
しかしながら,生徒の多くは,ある命題とその逆の命題とを同じことがらとして捉える傾向が強いように経験的に思う.例えば,「合同な2つの図形の対応する角がそれぞれ等しい」が,「2つの図形の対応する角がそれぞれ等しければこれらの図形は合同である」とは限らないと気付きにくい.指導の手立ての1つとしては,「作図の順序を入れ換える」(鈴木,1994)ことが有効である.本時でも図をかく場面を設けて,動機付けていく.

コンテンツ担当者・著者

お茶の水女子大学附属中学校 藤原大樹

論文・教材本文
第3回数学授業づくり研究会の当日配付冊子の原稿(日本数学教育学会)

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  • 登録日時 2019-11-29 08:26:18
  • 更新日時 2023-03-11 08:41:08
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