「過不足の問題」をいろいろな方法で解いてみよう(中1 一次方程式)

教科・単元、キーワード
  • 算数・数学
  • 探究力・活用力
校種・学年
  • 中学校
  • 中1
校種間連携
概要

本教材は教科書でも扱われている,いわゆる「過不足の問題」である。問題文は単純であるが,立式が難しく,苦手な生徒も一般的には多くいる。
一次方程式の利用の小単元,特にその初期段階では,生徒の中には方程式を使うことにまだ抵抗がある者も一定数いると考えられる。そこで本時では,方程式を用いない方法も並行して扱い,その解決で用いられた図を問題理解や方程式の立式に生かすという指導の手立てを講じることとする。
例えば,東京書籍の教科書「新しい数学1」p.104の例2では「折り紙を何人かの子どもに配ります。1人に4枚ずつ配ると9枚足りません。また,1人に3枚ずつ配ると15枚余ります。子供の人数と折り紙の枚数を求めてみよう。」が扱われている。まず「足りない」事実,次いで「余る」事実を情報として載せており,同ページの問3も同様である。「足りない→余る」の順では,方程式を用いずに解決する方法が出にくいのではないかと考えた。つまり,まず「余る」事実があって,余ったので1枚ずつ追加して配ったという場面を想像できれば,数学が苦手な生徒も自分の力で問題に積極的に関われるのではないか。
そこで,以下の問題を扱うこととした。

「先生が画用紙を生徒に配ります。1人に2枚ずつ配ると,10枚余りました。そこで今度は,1人に3枚ずつ配ると,5枚足りませんでした。これらのことから,生徒の人数と画用紙の枚数をいろいろな方法で求めよう!」

なお,方程式を用いないで解決する反応を想定して認め,方程式を用いて解決する反応と並行して扱う。その際,これらの考えにはそれぞれ次のようなよさがある。
○方程式を用いない算術的な方法のよさ
新たな知識を使わずとも,小学校で学習した知識や考え方で解決することができる。
○方程式を用いる代数的な方法のよさ
わからない数量を文字で表すことで,問題場面における数量の相等関係をそのまま式表現することができる。また,いったん立式すれば,後は形式的な操作により解が得られる。
本時ではこの2種類の方法を並行して扱う。算術的な方法は,上記のよさの一方で,問題の文脈に応じて個別的に立式していく必要があり,不便さや限界もある。それぞれのよさと限界を比較し,味わうことを通して,方程式を用いる方法のよさを徐々に実感させていきたい。ただ,生徒の実態を踏まえ,方程式を用いる方法については無理に強いることはせず,「両方の方法ができるとよい」程度の勧め方とする。そのために,算術的な方法に固執している生徒にも,方程式を用いた代数的な方法についても関心をもたせられるように丁寧に扱うことで,代数的な方法を十分に解釈できるようにしたい。
その際,算術的な方法で用いる「生徒」や「画用紙」の離散量の図を立式に生かせるように,何度も関連付けて意味理解の深化を促したい。このような学習指導を,一次方程式の利用の小単元で複数時間の授業で行うことを通じて,生徒各自の捉え方が方程式を用いた方法に少しずつ向いていくことを願うこととする。
なお,生徒の人数をx人,画用紙の枚数をy枚として,2つの2元1次方程式(連立方程式)をつくる生徒もいると思われる。その場合には,この考え方を紹介し,2年生の学習内容であることを伝えた上で,2つの式を1つの1元1次方程式にまとめることができるということを理解させるようにする。ただ,どの程度扱うかについては,時間的な制約を鑑みて判断したい。
また,過不足の問題の立式には困難さが伴う(国立教育政策研究所,2008)。多くの教員が経験的にも把握している事実であろう。過不足の問題の立式については,清水(2017)が以下の点を明らかにしている。
○過不足の問題において立式できない生徒が,文字を物として理解していること
○それ以外にいくつかの文字の理解には次の相があり,方程式を正しく立式している生徒の中にも見られること
・問題文の言葉の置き換えとしての文字の理解
(例:3x+20は折り紙の枚数を表しているにもかかわらず,「3枚ずつ1人に配ると20枚余る」を表している,といったように操作として捉える)
・数値の置き換えとしての文字の理解
(例:3xも20も折り紙の枚数を表しているにもかかわらず,「3xは人数を表し,20は枚数を表す」といったように別々の数量を表す式と捉える。)
・物そのものの置き換えとしての文字の理解
(例:生徒の人数xを使った式は生徒の人数を表すと捉える)
生徒の記述や発話から素朴は反応を拾い上げ,文字,項,文字式(左辺,右辺),方程式それぞれの意味の解釈に留意しながら学習指導にあたりたい。その際には、上記の離散量の図が有効に働くはずである。

コンテンツ担当者・著者

お茶の水女子大学附属中学校 藤原大樹

論文・教材本文
沖縄県での学習指導案(板書付き)

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  • 登録日時 2023-09-20 20:45:51
  • 更新日時 2023-09-20 20:45:51
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