環境に対する豊かな感受性を育む(2年次)(2009年度 幼稚園研究紀要)
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本園はお茶の水女子大学の一角に位置していますが、大学全体が文京区の大塚という、起伏の豊かな土地にあり、そのおかげで園庭も変化に富んだ場所になっています。そして何よりも、この地に園舎が移って以来70数年にわたる年月を経て育まれた自然は、この園で過ごす子どもたちだけでなく大人たちも含めた多くの人びとに、尽きることのない体験と心の輝きを与えています。それは、本園の何ものにも代え難い財産と思います。
私たち人問は、普段の生活のなかで何気なく時のたつことを知ったり、場所を移動して動いたりしています。でも、一人ひとりの生きてきた道のりを振り返った時に、時間や空間の経験が幾重にも積み重ねられて、今の自分があることに気づくことがあります。その経験は、けっして歴史的な事件のような大きな事柄ではなく、日々の日常のなかに見え隠れしながら、私たちの身体の中に少しずつ、でもたしかに感じて体験したことにちがいありません。「環境」という言葉のその通りに、私たちの周りにあるもの、すべてから時間や空問の経験を受け取っているはずです。
普段の生活のなかにある自然は、とても具体的に時の流れや場所のすがたを見せてくれます。本園の園庭もまた、日々の園の生活のなかで毎日毎日変化し、そこに関わる子どもたちや大人たちがその変化に気づき、関わることによって、とても具体的なかたちで、時間と空間の存在を体験させてくれます。それは、時計や定規によって計られた量としての時問や空問ではなく、自然の動植物が生きていることによって育まれた質としての時問や空問であると言えます。だからこそ、生きている子どもたちや大人たちの身体に蓄積されてゆく時空間であり、また、ともにそこに生きているものとして、その時空間のなかに漂うことができるのでしょう。
本園の園庭の小高い場所を、私たちは「おやま」とよんでいますが、そこには樹齢何百年と言われる大イチョウがあります。秋になると落ちたイチョウの葉っぱで、「おやま」一面が黄色い絨毯になります。その絨毯に包まれて秋の澄みきった青空を見上げることができるのは、自然の惜しみない恵みを享受していることに他ならないでしょう。一人の人間という限りある存在にとって、遥かな時間の流れと空問の広がりに触れる瞬問が、そこにあります。でも、ほんとうは、自然はいつもそんなすてきな瞬間を用意していてくれるのであって、それに私たちが気づくことのほうが、もっと大切であるにちがいありません。
出典:2009年度 幼稚園研究紀要
- コンテンツ担当者・著者
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お茶の水女子大学附属幼稚園 宮里暁美・伊集院理子
- 論文・教材本文
- 環境に対する豊かな感受性を育む(2年次)(2009年度 幼稚園研究紀要)
- 関連情報
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